名古屋大学医学系研究科川部教授との共同研究(次世代経皮吸収剤技術を除く)
非臨床系研究用バイタルサイン計測技術
本テーマでは、MEMS技術を非臨床系研究(動物実験)に展開することで、薬物投与に伴う臓器機能(血管・呼吸器系)への影響を無麻酔・無拘束の条件下で直接的かつ定量的に計測評価できるバイタルサイン計測技術の確立を目指します。具体的には、気道内気流に肺運動由来の流れ以外に心運動由来の流れが重畳されていることに着目し、気道内気流を用いて呼吸と心拍とを同時に計測評価します。将来的には、安全性薬理試験ガイドラインの基準を満たすことが可能な日本発の薬物臓器機能評価システムを世界に先駆けて構築することを可能にします。
点滴薬剤投与量の高精度制御システム
本テーマでは、薬剤投与量を高精度に制御することを目指し、以下に示す二つの手法を提案・開発しています。
(1) 点滴バッグを用いた受動的薬剤投与システムに対しては、クレンメ下流にMEMS流量センサを導入し薬剤投与量の高精度流量計測を可能します。具体的には、医療用途であることを考慮し、流量計測に可動部が無く機械的安全性に優れた熱式原理を用い、低温度駆動(40℃以下)での計測を実現します。
(2) シリンジポンプを用いた能動的持続性静脈注射に対しては、血管外漏出を瞬時に検出可能にするセンサシステムの実現を目指します。具体的には、点滴ライン内の流量と圧力をリアルタイムで検出できる超小型センサシステムを開発しています。
無痛でのワクチン投与が可能な次世代経皮吸収剤技術
本テーマでは、無痛かつ安全・簡便な次世代投薬法の実現を目指して、生分解性高分子材料による経皮吸収剤マイクロニードルの実現を目指しています。具体的には、MEMS微細加工技術を駆使して、原型となる超微細Si製マイクロニードルの金型を作製し、更にこれにモールドプロセスを加えて、核酸医薬・治療用ワクチンに適した「生分解性マイクロニードル」の実現に挑戦しています。また、薬剤投与量を高精度に制御でき、かつ瞬時投与が可能な「先端分離型マイクロニードルデバイス(皮膚内挿入後の引抜き時において先端部を支持部から分離し、薬剤投与量の高精度制御かつ瞬時投与を実現)」を新たに提案・開発しています。将来的には、無痛経皮ワクチン製剤などの新薬が開発されるとともに、自己投与化が可能(医療従事者の助けが不要)となり、開発途上国におけるワクチン接種が飛躍的に普及すると考えています。